洞窟探索
学園内の購買部、その中でも貴重な物や高価な物を扱っている店にカイトは来ている
ちなみに学園にはその広すぎる敷地のせいで色々な場所に購買部が設置されている。しかも購買部といっても統一されている訳ではなくちょっとした商店規模な物からスーパークラスまで様々である。
その中でもカイトが今いる店は一般生徒では相手にすらされない特殊な店だ。
カ「なあ、このヒールクリスタルもう少し安くならないのか?」
?「悪いけど僕の見立てどおりならそれはかなり良質な品だ。値段が上がることはあっても下がることはないね」
カ「お前が言うなら間違いないんだろうな。でもさ森近、俺たちの仲だろ?負けてくれたっていいじゃないか」
森近と呼ばれた青年、森近霖之助は元々学園の外で商売をしていたがある時を機に学園内のこの店を任されて以来こっちの方がやりがいがあり儲けがでることからずっとこっちの切り盛りをしている。
霖「そうは言っても僕としても商売なんだ。ただでさえ霊夢や魔理沙にいろいろと持って行かれているからね。嫌なら自分で作ってみてはどうだい?」
カ「無理無理、俺の錬金スキルじゃ最初の段階の魔力結晶すら満足に出来るかどうかも怪しいって」
ここでスキルについて説明しよう。
簡単に言うとスキルレベル=熟練度と言ってもいい。その系統の経験を積むことで難易度の高い事が出来る様になるということだ。
錬金スキルを例にとって挙げるとこの世界の錬金とは複数のアイテムを組み合わせて別のアイテム作ることを指す。
錬金のスキルレベルが初期の1ならば極々簡単なポーションの練成さえ成功率は20%を下回る。しかし何度も様々な練成をこなすことで成功率が上がり、難易度の高い練成をこなせるようになる。
スキルレベルが最大の100となればほぼ全ての錬金レシピを解読でき、成功率は95%以上を安定して出せるようになる。
クリスタル系のアイテムは材料となる魔力結晶を作るための推奨スキルレベルが30、そこから各種クリスタルとなると50〜70程度必要とされている。
カイトの錬金スキルは20レベル前後なので魔力結晶の作り方は知っているが成功率はかなり低くなる。
霖「しかしそんなに急にヒールクリスタルがいるのかい?ダンジョンに潜るだけなら仲間を、それこそミソラを連れて行けば回復には困らないだろうに」
カ「ソロでダンジョンに潜ろうと思って色々準備してるんだよ。てかクリスタル系アイテム値上がりしすぎじゃないか?転移魔法が使えない奴用のワープクリスタルまで値上がりしてるし」
カイトが言うようにクリスタル系のアイテムが全体的に値上がりしている。
元々クリスタル系のアイテムは魔法が使えない者が使うことが多いアイテムで魔法が使える者が多く、基本的にパーティーを組んで行動する事が多いこの学園でこういったアイテムが値上がりすることは滅多に無い。
霖「なんでも一部の生徒の中でクリスタル系のアイテムで帰還や緊急時の回復を行ったり、剣スキルを中心に鍛える事がブームになっているらしい。おかげでクリスタル系の在庫が少なくてね」
カ「あ〜、ここしばらく鍛冶屋が手入れの予約で一杯のせいで愛剣の手入れが出来ないってガイが愚痴ってたな。それが原因か」
霖「それで?そのクリスタル買うのかい?」
カ「ぬぅ・・・。仕方ないな、買うよ。あとエーテルと・・・けむり玉?これ普通のと違うのか?」
霖「ふむ、たしかこれは名称けむり玉、用途は敵から逃げるだな。ただけむりを出すためではなく逃げるときに使うといいのかも知れないね」
霖之助はけむり玉を手に持ってしっかりと確認しながら説明する。
カ「ふ〜ん、じゃあそれもいくつか買っていこうかな。会計いくら?」
霖「しめて13673円だな。まあ73円は切り捨てて13600円でいいよ」
カ「どうせなら600も切らない?」
霖「そこは妥協しない。それにダンジョンに潜ってくるなら色々と手に入るだろう?」
カ「そう言われるとつらいな。ほい」
財布からお金を出して支払いを済ませる。
霖「毎度どうも、珍しいものがあったら持って来てくれよ」
カ「おう、なんか見つけたら持って来る」
学園から少し離れた場所、森の中にある洞窟。地下深くまで何層ものフロアで構成されているこの洞窟は深さに応じて生息しているモンスターの強さが強くなっていくため駆け出しの冒険者や熟練者までさまざまな人が腕試しや鍛錬に訪れている。
現在確認されている階層は70階層まででその奥はいまだに多くが未探索とされている。
カ「相変わらず賑わってるな。さて、まずは40階層辺りかな。え〜と、今日は転送屋いるかな〜。お!いたいた」
転送屋とは弱い敵ばかりの浅い階層を避けて深いところまで一気に行きたい熟練者達に向けて商売している転移魔法使いである。
深いと言ってもその転送屋自身が言った事がある階層までさらには50階層までしか移動は出来ない。そして転送屋もその日その日でどんな人がいるかは分からないので50階層までいける転送屋は珍しい。
「こちら転送屋でございまーす。皆さんの実力次第で10から50階層までお送りいたしまーす」
どうやら今日の転送屋は当たりのようだ。
カ「すいませーん。転送お願いします」
「あ、はい。えーとすいません。幻想学園の生徒証か冒険許可証見せていただけますか?」
カ「あ、分かりました」
カイトは転送屋に生徒証を見せる。
「はい、カイトさん。総合Sランクですね。50層までお送りできますがどうします?」
カ「40層までお願いします」
「はい、ではじっとしていてくださいね」
カイトは光に包まれて洞窟前から40層入口まで転送された。
カ「さて、ここにソロで来るのは久しぶりだしどこまで潜れるかな」
言っているそばから周りのモンスター達がカイトを敵と判断して襲い掛かってくる。
カ「さぁて、やりますか!」
カイトはその場から動くためにも適度に倒しながら奥へと進んでいく。
そうしてしばらく進んだところ・・・
カ「ん?・・・なんだ?空気の流れが変だな。ということは」
違和感を覚えて周りの壁を探る。
カ「ここに何かあるな・・・っと」
壁を調べると一部が左右に開きその奥には部屋があった。
カ「お!この層で隠し部屋が残ってたのか!もう何もかも無くなってるかと思ってたのに!」
部屋の中には宝箱が2つ置かれている。
カ「宝箱拝見の前にトラップは・・・うわぁ、こっちは毒ガス、こっちはテレポーターだな。テレポーターとかマジ勘弁。キーブレードで鍵は開いても罠は外せないからな。盗賊スキル上げといてよかった」
盗賊スキルは名前こそ良いイメージを持てないが実際は解錠、罠特定&罠解除、隠し扉など冒険者には必須とも言えるスキルを纏めたものである。
パーティーを組むときは高レベル盗賊スキル持ちは1人は欲しいとさえ言われているほど優秀なスキルとされている。
カイトがキーブレードを持っていながらこのスキルを上げている理由はダンジョン内には罠が仕掛けられている宝箱や扉が多いのに対してキーブレードは鍵を開けることは出来るが罠は外せないという点があるからである。
ちなみにカイトの盗賊スキルはすでにカンストしている。・・・主人公のくせに
カ「ソロなら当然の技術だと思うけど?お前が好きなゲームでも盗賊は必要だとされるくらいだし」
・・・あの〜、すみません。それ私(地の文=作者)に言ってます?てか貴方以外そこには誰もいませんよ?
カ「・・・気のせいだ」
・・・私に話しかけてるじゃないですかー!やだー!!
そうこうしているうちに宝箱の罠と鍵を外し終えた。
カ「それでは・・・ごまだれ〜と」
某Zの伝説に良く使われる空耳を言いながら1つ目の宝箱を開けてみる。
カ「・・・ふぅん。金銀財宝、まあ定番だな。・・・おろ?金貨のいくつかは魔力が込められてるしこの指輪にも色々付加が付いてるな。使えそうなら貰っておいてそうじゃなきゃ売ろう」
続いて2つ目。
カ「こっちにはっと。剣と短剣、刀に本が数冊か。鑑定出来そうにないし持って帰って森近に見せるか」
そう言ってその部屋にあったものを全て回収する。
カ「さて今44層だからもう少し進んでみたら一度戻ろうかな。荷物が多くなったままだと動きづらいし」
部屋を出ようとするとアンデットタイプのモンスターが大量に地面から這い出てくる。
同時に部屋の入口が閉まってしまう。
カ「しまった!宝箱を開けたあとに出ようとすると発動するモンスター召喚トラップか!」
『タカラ・・・オレノモノ・・・』
『オマエモ・・・ナカマニ・・・・』
『タカラ・・・オイテケ・・・』
『ハコニ・・・モドセ・・・』
宝を置いていくように言っているアンデットは他のより風化が激しくかなり痛んでいる。
それに比べ貪欲に宝を得ようとする者や生きている者を道連れにして仲間にしようとしている者は比較的新しい。
カ「さしずめ宝を守るように配置されたアンデットと部屋にかけられた呪いで死んだあとも宝や生に執着し続けてアンデット化した冒険者といったところか・・・。
あんたらには悪いが俺はこんなところで死ねないんでな!突破させてもらう!」
武器を構えアンデットの群れへと立ち向かう。
アンデット達も各々武器を振り上げ襲い掛かってくる。
カ「よっと、魔神剣・連式!」
剣による衝撃波を威力、速度を落とし範囲、個数を増やして数体を同時に攻撃する。
しかし腕が壊れても足が壊れても動き続けるのがアンデットである。攻撃を受けてもカイトへと近づき続ける。
カ「うへぇ、分かっちゃいるが何時見ても気味が悪いな。まだゴースト系の方がマシに感じるぜ」
カイトがいくら攻撃を加えても完全に破壊されない限り何度でも襲ってくる。
カ「う〜ん。オマケになんか呪術的な結界でも張ってんのかね?壊れた部分の骨・・・再生してね?」
よく見てみると破壊された部分が少しずつではあるが再生している。2,3体程度なら万台は無いだろうが少なくとも30体以上いるこの状態で再生ありは危険すぎる。
カ「・・・なぁにこれぇ?レベルを上げて物理で殴ればいい理論はここでは通用しないってわけか〜。そっか〜」
笑いながら両手に魔力を溜める。
カ「なら魔法で跡形も無くせば良いよね?シュネーシュトゥルム!からのトルネード!」
左手で放った吹雪で凍らせたあと竜巻で粉砕する。
砕け散った氷がきらめきながら宙に消えてゆく。
全て消えた後に入口が開いた。
カ「これで一段落かな?しっかし思ったよりあいつらしぶとかったな。凍るのに時間かかったせいで魔力だいぶ消費したぞ」
荷物を確認しながら愚痴をぼやく。
カ「エーテルはまだあるけど思っていたより荷物が多くなっちまったな。しゃーねーな。今日は帰るか。エントラオフェン!」
脱出魔法を唱えて洞窟の入口まで一瞬で戻りそのまま学園へと帰っていった。
学園に戻って購買部。カイトが霖之助にダンジョンで見つけたアイテムを見せている。
霖之助はそれぞれ手にとってじっくり見てそれがどういうものなのかを見極めようとしている。
まず鑑定が済んだのはどこか悲しげな気配を発している短剣。
霖「この短剣はラッへという名前だね。確かドイツ語で「復讐」という意味だったかな?
用途は復讐道具だね。と言っても復讐に使われていたというだけでただの短剣として使えそうだね」
カ「こっちの剣は?」
十字の柄頭を持つ神秘的な雰囲気を持つ剣について尋ねる。
霖「テンプルソードだね。神殿騎士が使う清められた特殊な金属で作られた剣で闇属性を持つ相手により多くのダメージを与え、光属性を高める効果があるらしい。性質上闇属性の者には持つことすらできないということだ」
霖「刀の方は村正のようだね。ただ村正の銘があるだけではなくかなり妖力が込められているね。刀本来の妖刀としての器にさまざまな怨念や妖気が流れ込んだのだろう」
そう言いながら霖之助は禍々しい力を漂わせる刀を気をつけながら机を上に置く
カ「そりゃレアな品だが扱いづらいもの拾っちまったな」
霖「本のほうだけどほとんどは珍しくない魔道書だが一冊だけ面白いというか危険というか珍しいものがあったよ」
カ「まじで?なになに?」
霖「ネクロノミコンの写本」
カ「・・・まじで?」
ネクロノミコン。危険すぎる本として特殊禁書としてオリジナルは未だにどこかに封印されていると伝えられている。
その写本と言ってもそれに内包される魔力も邪気もそこらの魔道書の比にならない。
霖「この本についてはキチンと調べた後、禁書として図書館に送っておいて良いかな?」
カ「ああ、なんか嫌な魔力を感じると思ったら村正だけじゃなくそんな物まであったせいか」
霖「まあ、ここにある写本ならある程度の魔導師なら扱えるだろうけど一応禁書指定で管理した方がいいだろうね」
カ「まあそれはそれでいいとして商談といこうか」
霖「ふむ、ではこの中でどれを売ってくれるのかな?」
カ「そうだな・・・テンプルソードはこのまま持って帰らせてもらおうかな。あとこの指輪だけど守護魔法と癒しの力があるって言ったよな?」
霖「そうだね。その指輪は指にはめている者の身を守り少しずつ魔力と体力を回復させる力がある」
カ「じゃあこいつも貰っていくよ。あとは全部売りで」
ダンジョンで見つけたアイテムは剣と指輪だけ自分であとは売りに出す。
霖「ふむ、出来れば村正も持って行ってほしいね。君ならこれを従えることも出来るだろうし、一度ある程度この妖力を払って貰わないとこっちとしても扱いに困る」
カ「仕方ないな。なんとかしてみるさ」
霖「よしそれなら・・・これでどうかな?」
電卓を弾いて金額を示す。
カ「おいおい、いくらなんでも安過ぎるだろ?この玉鋼とかかなり良質だと思うんだが?」
霖「それならこれでどうだい?」
カ「・・・これならいいかな」
霖「よしそれなら成立だ。いつもの口座に振り込んでおけば良いかな?」
カ「うん、それでよろしく」
話がまとまったところでカイトは帰っていった。
温まった懐で何か皆に奢ろうかなと考えながら。
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