真夏の一時
カ「あぢぃ・・・」
ガ「開始一行目、最初のセリフで何を言っているんだお前は」
真夏のとある日の放課後、教室内でカイトは机に伏せながら暑さでだらけている。
テ「俺としてはお前こそ開始一行目とか何を言っているのかと言いたいのだが」
カ「だってよ〜。暑いもんは暑いっての。なんだってこの時期にエアコンぶっ壊れるんだよ」
カイト達の教室ではエアコンが壊れているらしくカイトだけでなく周囲の教室に残っていたクラスメイト達も暑そうにしている。
ガ「知るか。てかお前なら溶けない氷くらい作れるだろ。てか作れ。そして俺によこせ。それも1つや2つじゃない全部だ」
カ「・・・エーテル30本な。前払いで」
エーテルとは魔力をある程度即時回復させる魔法薬の1つである。学園内購買または錬金術部にて販売中(1本1000円)
ガ「よし、テラが払ってくれるってよ」
テ「巻き込むな。エーテル30本も持ってなければそんな金も無い。それにそんなに必要か?」
カ「ん〜。氷を作るだけなら余裕だけど溶けないとなるとそこそこ面倒な術式組まないといけないし、魔力消費が激しいからな」
ガ「建前はそこまでで本音は?」
カ「いちいち作るのだりぃからに決まってんだろ」
作れるけど作る気力はまったく無いわけである。この暑さなら仕方が無いとは思うが。
ガ「しかし暑くて仕方ねーや。チルノ騙して氷でも貰ってくるか?」
テ「それはやめておいたほうがいい。氷精親衛隊がうるさいからな」
カ「なにそれ?」
説明しよう。氷精親衛隊とは夏が来るたびに様々な人妖に口八丁手八丁で騙され続けて能力を使いすぎてしまうチルノを守るために大妖精を中心に組織された団体である。
ただ実際のところはチルノを守ろうとしているのは大妖精を始め数名のみで残りの面々はチルノに近づいて涼もうとしているだけである。
しかし独占したがってはいるので親衛隊以外がチルノに近づくことは難しくなっている。
・・・噂によればチルノや大妖精といった幼い妖精たちに近づくためだけに入る者もいるとかいないとか
ガ「うわぁ・・・。相手にするのがめんどくせぇな」
魔「何の話をしているんだぜ?」
ひょこっと白黒衣装が顔を出す。
カ「見るからに暑そうな服装で近づくな」
霊「あんた誰からもそう言われてるんだから服装変えたら?」
魔「これが魔女の正装なんだぜ。今更変える気なんてまったくないぜ」
確かに黒い服、黒い三角帽子は魔女や魔法使いとしてのイメージがあるが・・・
カ「パチュリーとかアリスは黒じゃないよな。それに魔理沙の服装ってちょっと変えたらむしろメイド服?」
どうみても魔法使いというよりエプロンドレスやフリルなどメイド服らしい要素が目立つ気がしないでもない。
いっそ帽子をメイドがよくつけてるような頭飾りにすればメイドですといわれても差し支えない気がする。
霊「だってさ、魔法使い廃業してメイドになったら?」
魔「え〜、やだぜ。咲夜みたいに誰かにへこへこするなんて私らしくないんだぜ」
咲「私は好きでお嬢様に仕えているの。お嬢様を馬鹿にするなら・・・刺すわよ?」
先ほどまでいなかったはずの本業メイドが魔理沙の首筋にナイフを当てる。
魔「な、なぁ、咲夜。私はメイドそのものを馬鹿にしているわけじゃないし、レミリアやフランを馬鹿にするつもりはない。だからそのナイフを下ろして?」
咲「それならいいわ。それじゃあお嬢様が呼んでいるからこれで」
現れたときと同様に音も無く消える。消えた場所にはカードが2枚落ちている。
カ「カードを残していくなよ・・・。片付けるのはこっちだってのに」
裏向きで落ちていたカードを拾い表面を見てみる。どうやらタロットの大アルカナの月と死神のようだ。
カ「何の冗談だか。今回の件で両方正位置として見るなら潜在する危険、死の予兆ってところか?」
ガ「もしくは月=吸血鬼姉妹、死神=自分とかじゃないか?」
カ「その発想は無かった。お前天才じゃね?」
霊「そんなどうでもいいことよりこの暑さどうにかなんないの?」
テ「そうは言うがな。俺たちだってどうにか出来るならとっくにしているさ」
ガ「氷系が得意な魔法使い殿もこうしてやる気を削がれているしな」
カ「魔法使いより魔法戦士と呼べ。魔法専門じゃないんだからよ」
魔法使ってりゃ魔法使いでいいだろ。うっせ岩ぶつけんぞ。とふざけあっている二人をよそに魔理沙が切り出す。
魔「ならここは普通の魔法使いの出番だな!」
霊「あんた光とか熱とか冷たいものとはほど遠いじゃない。やめときなさいよ。あつくるしい。いっそのこと妖夢の半霊でも捕まえて・・・」
魔「あいつならスキマで連れて行かれたぜ?みょーんとか言いながら引きずり込まれていくのは傑作だったな」
カ「あいつも運がないな。どうせ今頃紫のやつにこき使われてるぜ」
テ「結局涼む方法はなしか・・・」
ガ「そうなると余計暑くなってきた・・・」
ただ話しているだけでは暑さを紛らわせるわけも無く。ちょっと気を抜けばすぐに暑さが襲い掛かってくる。かといってどうにかできる術があるわけでもなくだらけている。
ミ「みんなどうしちゃったの?すっかりだらけちゃって」
そうしているうちに別の用事で離れていたミソラとアクアが戻ってきた。
カ「暑さに勝てる術なんてなかったことに絶望した学生の図」
ア「なんですかそれは・・・。そういうことならここで待たずに駅前のカフェで待っていればよかったのに」
アクアの発言にその場にいた全員に電流走る。
テ「しまった」
ガ「その手が」
カ「あったか」
霊「あそこの店安くて美味しいかき氷売ってたし」
魔「最適な場所あったのに失念していた」
ミ「ほんとに皆暑さでまいっていたんだね」
アハハ。と苦笑いするミソラ。
カ「こうしちゃいらんねぇ。さっさと駅前の店に行くぞ。あ〜カキ氷一気食いしたくなってきた」
ガ「よっしゃなら大盛りカキ氷早食い勝負でもするか?」
カ「お?負けたら相手の分おごりな」
テ「腹壊すぞ」
霊「う〜ん」
魔「どうした?」
霊「勝てるなら私も参加しようかしら?でもカキ氷早食いは自信ないのよね〜」
ミ「やめときなよ〜。お腹壊すだけだって〜」
ア「普通に食べましょうよ。あの二人あとで後悔するだけですから」
普段のペースに戻ったカイト達は早速駅前へと向かっていった。
その後、一気食いのせいでお腹を壊して唸っているカイトとガイがいたことは想像に難しいことではなかった。
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