絶望の贈り物 後編



クイーンは確かに速く、どう動くかは読みづらい、だが・・・

ファ「だけどな!その速度くらいなら見えてんだよ!」

ガ「すげぇ、クイーンの速度に追いついてる・・・」

クイーンの速度に追いつきながらクイーンの攻撃を阻害する。
だが互いの速度が速度だけにかすり傷でもかなり大きなダメージになってしまう。
さらには決定打が与えられず戦闘が長引いてしまっている

ミ「・・・癒しの力を秘めたる聖なる光・・・天より降り注ぎて我らにその加護を与えたまえ・・・。グランツ・ハイリヒトゥーム」

ミソラの魔法が発動して、みんなの傷が徐々に癒えていく。

ファ「お?広域型持続魔法か、これは助かるぜ」

少しずつではあるものの、傷が癒えることで精神的に余裕がでてくる。

ファ「だが余裕が油断に変わらないうちにクイーンを仕留めるしかないか」

ガイやミソラに向かないようにこっちに意識を向けさせているとはいえ、縦横無尽に動き回るクイーンが相手ではいつ攻撃が流れていくかわからない。

ファ「仕方ないか、ちょっと負担がでかいけど・・・」

スピードをさらにあげてクイーンの速度を超える。

ガ「カイトの姿が・・・消えた?」

ファ「光の剣閃、その身に刻みて闇へと還れ!奥義!刹那閃光斬!」

一瞬無数の閃光が走ったかと思えば次の瞬間にはバラバラになってクイーンの姿があった。

ファ「っぅ、予想以上にこの技きついわ・・・、一瞬とはいえ・・生身で・・音速を超えるもんじゃねーな」

音速を超えて数十発の斬撃を繰り出すこの攻撃、普通であれば反動で自分がバラバラになってもおかしくはない。
魔法でそうなることは防いだものの、全身に走る激痛に耐えかねて膝をついていると、ルークが向かってきていることに気付いた。

ファ(あ・・・よけらんねぇ・・・)

ガ「やらせるかよ!・・・見た目通り重過ぎんだろこの駒!」

あたる、と思った瞬間、ガイがルークを受け止めて踏ん張っている姿があった。

ファ「わりぃ、助かったわ」

ミ「無茶は駄目っていったのに、お願いだから無茶しないでよ」

ファ「だー、まだ終わってないのに泣きそうな顔してんじゃねぇ。邪魔なクイーンは仕留めたんだ。早くキングにチェックメイトをかけるぞ」

ミソラの回復を受けて立ち上がる。

ファ「さーて、とっとと片づけるぞ」




しばらく経った後・・・
キングを含め残り8体となり残り半分となったとき、

シ『ん?まだくたばってなかったか、ならもう一段おもしろいことしてやんよ!ヒャハハハ!感謝しな!』

シンの声が響き渡ったあと、見たくはなかった光景が広がる。
壊したはずの駒がもう一度配置されて動き出したのだ。

シ『そうだ!その顔だ!いったはずだぜ?全は一、一は全ってな!もっと絶望して俺を楽しませてくれ!!』

不気味な笑い声を響かせながらシンの声は遠ざかって行った。

ファ「冗談じゃねぇ、せっかく倒したやつ全部復活かよ」

ガ「全は一、一は全。終わらせるにはキングを倒せばいいが他の駒が全力で守りに来るってわけか」

ミ「ルークが入れ替わることがなければ何とかなりそうなのに」

そう、その敵を戦うのにクイーンの機動力とルークのキャスリング、そしてその二つになり得るポーンの存在の3点を注意をしておかないといけない。
だからといって他の駒を完全に無視していいことにもならない。

ファ「さすがに即時復活ってわけではないはずだ。最低でもルークとクイーンを壊してポーンがプロモーションする前にキングを倒す。これでいくしかない」

ガ「とはいうけどさ。ルークは見た目通り耐久力高いし、クイーンはあの速度だろ?倒した後プロモーション寸前でしたことになりかねないぞ」

ファ「正直な話まずいかな、キング自体の力は弱いけど周囲がめんどうなやつばっかりだ」

こっちは徐々にいろいろと消耗していくのに対してあっちは倒された駒が時折再配置されることになる。長期になればなるほどこちらの不利になるのは間違いない。

ミ「……残りの魔力を考えたら一回だけ…かな…、でもわたしだって!」

ファ「ミソラ?」

ミ「ごめん、ちょっとの間だけ時間頂戴」

ミソラが詠唱体制に入り、足元に少しずつ魔法陣が展開され始める。

ファ「くっ、何をする気かしらないけど、そんな無防備さらすなっての」

ガ「それでも守るのがお前の役目だろ?ミソラだってお前が寝てる時に何もしてないってわけじゃない。少しは信じてやってくれ」

ファ「信じてないわけじゃない、ただ無防備なのが心配なだけだ」

そうこう言っている間にも駒たちが襲いかかってくる。
壊しすぎてしまうと新しく次の駒が配置されると考えるとうかつに壊すということができない。

ファ「倒さないようにってなかなか難しいな、吹き飛ばしてしまうっていうのもありだろうけど俺の技って連撃タイプが多いわけだからちょっと厳しいか」

ガ「そういうことなら任せろ。獅子戦吼!」

獅子の頭を模った闘気が放たれ、その闘気がぶつかった相手が遠くまで飛ばされる。

ファ「へぇ、なるほどな。だが、無駄うちすんなよ。お前だってだいぶ消耗してるだろうが」

目の前に迫ってきたポーンを宙に浮かせて連撃を加えて吹き飛ばす。

敵をミソラにも門にも近づけさせないように戦いながらしばらく経った後・・・

ミ「聖なる光を宿し機神よ、今こそ邪なるものの進軍を阻み、その力をもって裁きを与えたまえ。アレクサンダー!」

魔法陣が完成し、巨大な機械がそこから出現する。
その巨体は門を覆いつくし、その両肩の無数の砲門は敵に狙いを定める。

ミ「うう、やっぱりアレクサンダーの魔力が強すぎる・・・。でもあきらめない」

ミソラの魔力に反応するように訪問に光が集まる。
その光が臨界に達した瞬間、無数の光線が降り注ぐ。

ミ「心無きものに光の裁きを!“聖なる審判”!!」

無数の光は空中で数本の光に束ねられ、クイーンとルーク、キングへと向かっていく。
巻き込まれたポーンが粉々になるほどの威力、キングに当たればひとたまりもない・・・はずだった。
自身も狙われているにも関わらず、ルークが2体ともキングの前に立ちはだかり、地震に向かっている攻撃とキングに対する攻撃をすべて受け止め、砕け散った。

ミ「もう・・・だめ、魔力が・・」

ファ「ミソラ!くっ、どちらにせよ俺も魔力がたりねぇ、今こそキングを討つチャンスだっていうのに」

ガ「なら俺に任せてくれ、最後に一撃ぶちかましてやる」

そういうとガイはキングへと向かって走り出す。
そして目の前に立つと、剣を地面に突き刺し、左に雷を、右に炎の闘気を宿す。

ガ「これが俺の奥義!獅吼焔雷陣!」

青白い獅子と真紅の獅子が左右から喰らいつき、衝突点からすさまじいエネルギーがほとばしる。
まともに直撃をうけたキングは炎と雷撃に飲み込まれ、崩れ去った。

キングが倒れると周りに残っていた駒たちも黒い霞となって消えていった。

シ『ちぃ、くたばらなかったのかよ、つまんねぇ・・・ほんとつまんねぇよ、おまえ!
 ・・・ま、いいや、おまえらがずっと戦ってくれたおかげで闇の力を回収できた。ああ、そこに残ったやつももらっとくか』

まわりにただよっていた霞が一点にあつまり、宙に空いた穴に飲み込まれていく。

シ『次はもっと面白いやつを作っておくからまた遊んでくれよ。そんときはちゃんと絶望しながらくたばってくれよ?ヒャハハハハハハハ!!』

シンの笑い声が聞こえなくなると周囲に漂っていた闇の気配も消えていった。

ガ「おわったか?」

ファ「そうだな、さあ、屋敷にもどろう。ミソラ、立てるか?」

ミ「すこしふらつくけど大丈夫・・・」

ふらつくミソラを抱え上げて、俺たちは屋敷へと戻っていった。




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